車のカタログ燃費について考えてみる

松宮 湊人

2012年10月15日 17:44

(2016.5.1. 加筆・修正)


俗に言うカタログ燃費、公称燃費について素人知識ですが突っ込みを入れたいと思います。
(正式名は国土交通省審査値・燃料消費率)


さてカタログ燃費なんですが、みなさん正直どう思っていますか?
あれは、明らかに実際の燃費とはかけ離れた数字となっています。
私は「自動車業界ぐるみの詐欺?」なんじゃないかと勘ぐっていますが、あながち外れではないのかも…。

いくつか具体例をあげていきます。


トヨタ プリウス
10・15モード 35.5km/L
JC08モード 32.6km/L
参考実用燃費 20km/L

ホンダ フィットHV
10・15モード 30km/L
JC08モード 26km/L
参考実用燃費 17km/L

マツダ デミオSA
10・15モード 30km/L
JC08モード 25km/L
参考実用燃費 17km/L

ダイハツ ミライース
10・15モード 32km/L
JC08モード 30km/L
参考実用燃費 20km/L


以上、一般に燃費が良いと言われている車を見てみました。(2012年10月時点)
10・15モードは旧規準、JC08モードは新規準と言われるものです。
参考実用燃費は、某燃費サイトと私が個人的に調べた総合の結果です。

総じて、実用燃費はカタログ燃費の3割以上減るのが当たり前、となっています。
しかし、例えば30km/Lの3割といえば10km/Lちかくになります。
これは詐欺の部類に入るんじゃないか?と思うのは私だけでしょうか。
(アメリカだったら絶対訴えられてるはず、、)


それから、通常エンジンの車は高速などでうまく一定の速度(時速90kmくらい)で走らせてやれば、それなりにカタログ燃費に近い燃費を出すことは可能です。
ですが、流行りのハイブリッド車はどんなに頑張っても、カタログ燃費に近づくことはほぼ確実にありません。
(ごくごく短い距離ならばありますが、いわゆる「満タン法」ではほぼ無理です)

なぜか。
理由は電池です。
モード燃費を計測するとき、ハイブリッド車は電池が満タン(満充電)の状態から計測している、と思われます。
電池満充電からスタートする分、エンジンがストップしたまま走るEVモードで長く走れるので、カタログ燃費を伸ばすことができる。
私に言わせてもらえば、「ずる」をしているわけです。
HVシステムは中低速域ではある程度燃費は良いですがカタログ燃費に届くほどではなく、また本来燃費が良くなる高速域では電池の重さが足を引っ張って思ったほど燃費が伸びない。
だからハイブリッド車のカタログ燃費は、はっきり言って実際の公道で出すのは不可能に近いんです
となると、HVのカタログ燃費とはいったい何のための数値なのか、私は強い疑問を持っています。
(HVはいろんな高価で貴重な素材をたくさん使っている割に、環境性能が突出して良い訳ではない。だから私にはHVが特にすごいとは思えないのです)


また日本のモード燃費と呼ばれるものは、シャシーダイナモと言われるタイヤだけが回る機械の上で測定されるもので、現実の公道を走って燃費を求めるものではありません。
(この機械に、現実に走るのと同じだけの抵抗・負荷をかけたローラーの上で車を走らせ、排出された排気ガスの環境基準検査をし、同時に排気された一酸化炭素と二酸化炭素の量から逆算して消費した燃料を求めるものです)
そしてその走行パターンも、現実の公道を走るのとはかけ離れた不思議な走り方をするものです。
新基準と呼ばれるJC08モードも、結局のところ現実にはあり得ない不思議な走りをして、燃費を測定します。
そんな現実にはあり得ない不思議な走りで求めた燃費を基準に、減税や補助金などを決めるのは、おかしなことだと前々から思っていました。


それから、新基準と呼ばれるJC08モードは、本来ならばもっと計測される燃費は下がるはずでした。
しかし、自動車業界側が「新基準になって急にカタログ燃費が落ちたら顧客の混乱を招く」と言い訳をつけて強く反発し、検査基準をゆるくして走行パターンを骨抜きにしてしまいました。
(顧客は現実に近い燃費がカタログで分かったほうが良いはずです。結局企業は自分たちに都合の良いことしか言わない)


具体的にいうと、燃費計測時の許容誤差が当初±1秒だったものを、±2秒にしてしまったそうです。
これにより、本来の走行速度ラインで細かい速度の上下が続く部分がありましたが、許容誤差が大きくなったためにまったくの一本線になってしまい、現実に近づくはずの燃費がまた離れてしまいました。
ちなみに旧基準の10・15モードの許容誤差は±1秒です。


カタログ燃費が新基準に切り替わっていくとき、思ったよりも下がらなかったり、旧基準と同じという車もありました。
変だと思いませんでしたか?
(企業努力も少なからずあるとは思いますが)


「カタログ燃費と実際の燃費との差を、なるべくなくそう」という動きは、業界側からはもはや期待できないようです。
そういうつまらないことをしているから、「日本車は世界一燃費が良い」という幻想(嘘?)がまかり通るのです。
私が考えるに、日本車が燃費で世界をリードしていたのは、10年くらい前まででしょう。
ここ何年かで海外メーカーの車は、燃費性能でも日本車と肩を並べるくらいに、すでになってきています。
欧州系メーカー(特に独VW)の技術進歩はめざましく、燃費だけでなく走行・操作・居住・環境性能などの総合的な車の出来・質においては、もはや日本車は追い付かないくらいすごい車(正しくは普通なのにすごい車と言うべき)を作るようになっています。


今後も当分の間、日本においてはカタログ燃費の独り歩きが続くのでしょう。
メーカーは、カタログ燃費が直接売り上げにつながるので、とにかくカタログ燃費を良くしようとあの手この手と策を凝らしています。
しかし、現実離れしたモード燃費に凝れば凝るほど、現実の道路を走るのには適さない車になっていくのは、必然です。
そして数字のマジックに惑わされて、日本車の質がどんどん悪くなっていく可能性は、とっても高い。(すでにかなり悪くなってると私は思ってます)

何のためのカタログ燃費なのか、改めてよく考えなければなりません。
その対応を間違えば日本車の質はさらに落ち、世界においての日本車の評価と価値もガタ落ちしていく、と私は考えています。
(近ごろ海外で日本車の売れ行きが悪いのはすべて円高のせいにされていますが、円高のせいだけじゃなく単純に日本車の出来・質そのものが低下しているから売れない、という面もあると思っています。皆さんが思っているほど、日本車の質は高くはないと思います)
今がまさに、その曲がり角に立っている時だと考えます。


とりあえずやるべきことは、せっかくJC08モードという新しい基準を作ったのだから、その許容誤差を本来の±1秒に戻すこと。
これでほんの多少ですが、現実の燃費に近づくはずです。

それから、ハイブリッド車は電池が満充電の状態からのモード燃費の計測をやめること。
そこは、どう考えてもやっぱり「ずる」でしかない。
せめて、電池残量7割くらいからスタートするべきでしょう。
(アメリカにおいての燃費測定ではたぶん電池満タンからは測定しておらず、日本のそれと比べると低めの燃費となっています。これはお国柄、訴訟になるのを避けるためだと思われます。日本は訴訟になることはないし、ずるをしても良い、、、てことですかね。残念です)

自動車業界からでも行政からでも良いから、これがやれるのか?
たぶん無理だろうなぁと思いながらも、今後を見ていきたいと思っています。

追記です。

最近気づいたのですが、某燃費計測サイトにておもしろい情報が載るようになったので、紹介します。
モード燃費達成率ランキング、というものです。
ユーザー情報から集めた実燃費と、各モード燃費を比べてどれだけ達成出来ているかのランキングです。
特にハイブリッド車については、達成率が50~60%と低いことが見てとれます。

興味のある方は、携帯・スマホ用サイトにて「e燃費」で検索してください。
あくまでばらつきあるデータの統計であることを考慮した上、参考にしてみてくださいね。
m(_ _)m


(2013.1.27. 追記)
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