(2013.12.11. 加筆、修正)
昨年衆院選挙前から始まった円安。
ここへ来て急激に円安へ振れています。
輸出系大企業は為替差益で業績が回復、株価も大きく上昇。
マスメディア初め、国民の多くも景気回復への期待を増しています。
ただ…。
この時期の急激すぎる円安は、多くの中小零細企業への大打撃となりうる、ということを頭に入れておかねばなりません。
今回の円安で業績が上がるのは、最終組み立てと輸出をしている大企業だけ。
その大企業を支える中小製造業へは、円安による原材料の値上げだけがじわりとやってくるからです。
日本は資源の少ない国ですから、円安はそのまま原材料費の上昇を意味します。
これまで不景気のなか、下請け孫請けの中小企業は大企業からの苛烈なコストダウンにさらされ、かなり疲弊しています。
そんな中での円安による原材料の値上げは、多くの中小製造業の息の根を止めかねません。
今回の円安により大企業は為替差益で売り上げが伸び、業績は回復するでしょう。
問題は、大企業が業績回復した儲け分を下請けに回せられるか、です。
不況のなか苛烈なコストダウンを押しつけてきた大企業は、その労をねぎらう意味を含め、すぐさまコストダウンの要求を緩めるのが大企業のすべきことでしょう。
でないと、日本のものづくりを支える多くの中小零細企業が、ばたばたと倒れかねません。
しかし私が予想するに、大企業がコストダウンの要求を緩めることはないでしょう。
なぜなら、大企業はまず自分の会社の業績回復が先、と考えているからです。
業績が上がれば株価がさらに上がるし、いままで利益がでてなかった分を取り戻したいと大企業は考えているでしょう。
逆に、また円高に振れる可能性があるとして、円高でも利益がでる体制を作るためにさらなるコストダウンを要求する可能性が高い、と見ます。
でも、大企業以上に苦難に耐えてきた多くの中小企業には、もう後がないのです。
たぶん、そろそろ円安による原材料の値上げがやってくるころです。
私は、日本のものづくりを支える中小零細企業が、この円安で次々に倒れていくのではないかと、気が気でないのです。
さらなる困難に、耐え切れるのか心配でなりません。
私は、大企業や経団連を正直あまり信用してません。
安倍首相は金融緩和と財政出動と規制緩和で、円安誘導してお金を動かし景気を良くしようとしています。
それによりまず恩恵を受けるのは、大企業すなわち経団連です。
その儲けが、従業員や下請けの中小企業へと回ることは、残念ながらかなり先の話になるでしょう。
以前と同じように、大企業は利益をただ社内へ溜め込むだけ…と私は予想してます。
リーマンショックが起きるまで、日本経済は約5年に渡り緩やかながら戦後最長の経済成長を続けていました。
しかし、下請業者の利益や従業員の収入が増えることはあまりありませんでした。
世界中で得た巨額の利益を下請業者や従業員へは回さず、大企業はずっと懐へ溜め込んでいました。
大企業はバブル崩壊時の経験があり、利益はなるべく会社内で留保しておこうという心理が働いたからです。
溜め込んだ巨額の社内留保は、ただ現金で持つよりも運用ができるように、大半を株や証券などの金融商品の形で持っていたと推測します。
そこでやって来たリーマンショック。
株価の急激な値下がりを受け、溜め込んでいた証券はかなり溶けてしまい、多額の損失を出したはず。
せっかく溜め込んだ利益は、株価急落を受けその多くを失ったと想像します。
加えて急激にしぼんだ需要と消費は、供給過多で大量の在庫を生み、大企業の経営を圧迫しました。
そこで大企業がとった行動は、みなさん知ってますよね。
大規模な供給・生産縮小、すなわち工場閉鎖とリストラです。(特に自動車関連)
会社を守るために正社員と派遣社員、下請業者を切り捨てるように、極端な生産縮小していきました。
切り捨てられる社員や下請業者のことなどそっちのけで、なりふり構わず切り捨てる、ひどいやり方でした。
今考えてもやりすぎだった感は強く、日本経済をトップで引っ張る大企業のやることだったとは私には思えません。
生産縮小により下請業者の仕事は激減。
加えて円高でも利益が出るようにと下請業者へさらなるコスト削減を要求し、まさに苛烈なコストダウンを押しつけました。
大なたふるいの急激な生産縮小と損失はあったけどまだ残っていた社内留保により、多くの大企業はリーマンショックを乗り切りました。
が、仕事の減少と苛烈なコストダウンにさらされた下請けの中小製造企業は疲弊し、多くの会社が倒産しました。
そして多くの方々が職を失い、路頭に迷うことになったのです。
私は、リーマンショック前の緩い経済成長の時、もっと従業員なり下請業者なりに利益をしっかり配分しておけば、今ほどひどい日本経済低迷はなかったのではないか?
不景気でもこれほど多くの人が苦しむことはなかったのではないか?と考えています。
大企業は、利益を給料などで従業員や下請業者へ回し、国民全体の所得が上がっていれば、その分だけ国内の消費は減らなかっただろうと思います。
大企業が社内留保していた巨額の利益は、リーマンショックの株安でかなり溶けてしまい、せっかく溜め込んだお金をうまく使えずにただ失っただけです。
だったら給料として従業員に与えておいた方が、よっぽど有効に使えていたことになります。
(企業としては、帳簿上社員への給料は負債扱いで、給料を増やせば利益が出ていないように見える。給料を増やさず会社で持っていた方が帳簿上資産とされ、利益が出ているように見える。利益が出ているように見えれば、株を買ってくれる人が増える、、、という訳です。企業は本来守るべき社員よりも、株主の方ばかりを気にしている。だから、内部留保は増える一方なのです)
加えて推測の域はでませんが、工場閉鎖と人員削減はガンガンやったくせに、実は思ったほど内部留保を使ってないんじゃないか?と疑いのある大企業もあります。
実のところ、今現在でも多額の内部留保を持つ大企業は結構たくさんいます。
従業員はあっさりと切っておいて、身銭は切っていない、、、という可能性がある。
(もし本当にそうだとしたら、ひどすぎる話です)
そういうところに大企業や経団連が気付き、真剣に反省をしているとは到底思えません。
今年の春闘を見れば容易に推測できます。(まだ始まったばかりですが)
安倍首相はさらなる円安へと、日銀の金融緩和を行う準備を着々と進めています。
今の円安でまず喜ぶのは、大企業と経団連だけです。
大企業が業績回復したって、大企業の懐が厚くなるだけですぐさま日本全体の景気が良くなるわけではありません。
結局自公政権は、経済界・大企業寄りの政策を進めるということです。
喜ぶのは大企業経営者だけで、雇われ側は後回し。
昔の自民党のやり方に戻っただけともいえる。
バブル崩壊後、さんざん同じような政策をやってきて、私たち国民の収入が増えた記憶はありませんが、、。
それから、急激な変化は必ずどこかに歪みを生じさせ、皺寄せがきます。
その急な円安という皺寄せが、中小製造業者へ迫っている。
また同時に、円安によるいろんな物の値上げもやってきます。
特に小麦や石油といったものは為替に大きく影響されやすく、また国際市場では依然として高止まりの状況が続いています。
今の円安の流れからいけば、今後は値上がりしていく一方でしょう。
電気料も値上がりは避けられません。
私たちの給料が増えるより先に、いろいろな物の値上げが次々とやってくるはず。
円安により、国民の生活が苦しくなるのは十分予想できます。
そして、来年以降からは消費税増税や復興税などが待っています。
事と次第によっては、景気は悪くなるのかも知れません。
今の円安を、ただ喜んで見ているだけではいけないと思うのですが、、。
マスメディアを見るかぎり、多くの皆さんが楽観的のようですね。(^ ^;
ま、その期待感が景気を良くすることもありますから、良いことなのかもしれません。
とりあえず、今くらいで円安が一旦止まってくれればまだ良いのですが、たぶん新しい日銀総裁が決まるあたりから次の円安の流れがやってくると予想してます。
私は不安の方が大きいので、色んな意味で覚悟をしておきたいと思っています。
m(_ _)m