放射線量の基準についての話1

松宮 湊人

2011年09月12日 10:46

今回は放射線量の基準について、いろいろ述べたいと思います。

福島の原発事故を受けて、人がどれだけ放射線を受けても良いのか、安全な基準を設けなければならない緊急事態が生じました。
まず、食品の放射能汚染に関する暫定基準が決められ、次に緊急時の外部被ばくの暫定基準として年間20mSvと決まりましたが、高すぎると批判をあびたり、厚労省の専門会議では年間1mSv、生涯で100mSvが望ましいという結果が出て、ますます混乱したりしました。
基準はいまだに「暫定」のままです。
で、結局どうなのか?というと、やっぱりよく分からない。
私も色々調べて、ようやく少し理解できてきたので、相変わらずの素人考えですが、ちょっとまとめてみたいと思います。



まず、結論から言ってしまいましょう。
人間が浴びても良い安全な低い放射線量については、現時点ではよく分からないというのが、結論です。
衝撃的な結論ですね。(;^_^A

なぜか?
実は、急性被ばくについては色々データ・統計(特に原爆のデータ)があって、それに基づく基準があります。
しかし、今回のように低い放射線量を長期間に渡って浴び続けるような被ばくについては、データ・統計がまったく無いに等しく、データ(科学的根拠)が無いから基準が決められない、という訳なのです。
つまり、大規模放射能汚染をともなう原発事故においては、今回の福島第一原発の件が初めてのケースといっても良い状況なのです。
だから福島県では全県民に対して、内部被ばく、外部被ばくあわせた放射線量の検査、および今後の健康診断を継続して行うことになりました。
そしてその情報を統計して出した福島のデータを、他の地域と比べることで、今後の低線被ばくに関する基本となるデータとなっていくのです。
ゆえに、今も基準は「暫定」のままなのです。

ちなみに、大規模汚染した原発事故というと、過去にチェルノブイリの事故があります。
しかしデータを取っていないのか、もしくは冷戦時代の情報隠しなのか分かりませんが、低線被ばくによる健康被害に関する詳しいデータは無いようです。(- -;



では、実際問題どのくらい放射線を浴びても良いのでしょう?
他の色々なデータを基に、素人考えで勝手に導き出してみたいと思います。
科学的根拠は薄く、推測で導き出すので、あくまで参考程度に見てください。


まず、普段人間は自然界からどのくらい放射線を受けているのか。
前も取り上げましたが、全世界の平均値で、外部被ばくが年間2.4mSv、内部被ばくが年間1.5mSvです。
線量が高い地域は年間10mSvを越えるところもあります。
日本は世界的には放射線量がかなり低い地域で、平常時の外部被ばくは、年間0.5〜0.8mSvくらいです。
厚労省専門委での「年間1mSvが望ましい」という情報はここから来ているんだと思います。

では、ここで例え話です。
仮に年間1mSvを基準としましょう。
ある日、会社命令でイタリアローマへ5年間の転勤となりました。
ローマの年間放射線量は外部被ばくだけで1.3mSvくらい。
専門委の示した基準、年間1mSvを越えるから、会社に対して「そんな危険な所へは行けません!」とあなたは言えますか?

この年間1mSvというのは、日本限定、しかも平常時のみ通用する基準で、世界的に見ればかなり厳しい基準だと思います。
私は人間が地球上で生きていく以上は、先程の全世界平均値、外部被ばくと内部被ばく合わせて年間3.9mSvくらい放射線を浴びても、まったく平気だと考えます。

あと、20mSv/Yという基準の数値がありますが、これは原子力関連の国際組織が定めた、緊急時における許容放射線量からきている数値です。
ただ、この数値自体は本来急性被ばくを前提とした数値で、長期的な低線被ばくについての数値ではありません。
ちなみに急性被ばくの場合に、実際に人体に害が出始めるとされている線量は、100mSv以上と言われています。
それ以下の被ばくでは、自然の病気発生の確率とほとんど差が無いそうです。
数字で言うと100mSvを短期間に浴びたとき、その後ガンになる確率は1~2%上昇するとされています。


話し変わって、放射線技師などで女性などが浴びても良いとされる、最も厳しい線量基準値は、年間5mSvとされています。(これも急性被ばくが前提の数値ですが汗)
先ほどの自然被ばくの世界平均値が3.9mSv/Yという数値を考慮にいれて、外部被ばくと内部被ばく合わせて年間5mSvという数値を非常時の基準のひとつとするのが、私は良いのではないかと考えています。
要は、今の時代なら世界のどこの国に行ってもおかしくないから、世界平均線量くらいが許容量だろう、という考えです(非科学的ですいません汗)。
また、子供に関しては大人の4分の1〜5分の1がひとつの目安とされます。
大人が年間5mSvなら、子供は年間1〜1.5mSvくらいと考えるのがベターではないかな、と思いますがどうでしょう。
妊婦さんについても、おなかの子供への影響を考えると、子供と同じ年間1~1.5mSvとするのが良いと思います。


上記の数値はあくまで参考として見てください。

長くなったので、内部被ばくに関しては次回とします。



追記です。
私の考えるひとつの基準として大人年間5mSv、子供年間1~1.5mSvを提示しましたが、外部被ばくと内部被ばくのすみわけをしていませんでした。
これは結構重要なことなので、きちんとしておきます。
余談ですが、国の基準はここがあいまいです。
基準が1mSv/Yと決まったら、外部被ばくだけを1mSv/Y以下にしようとしてますが、本来なら外部被ばくと内部被ばくを合わせて1mSv/Yにするのが普通の考え方です。
外部被ばくだけを見ていたら、内部被ばくと合わせたら結局1mSv/Y以上になってしまうことになります。
行政にはその辺も、しっかりしてほしいところです。

さて、例の放射線量の世界平均値を、参考にすみわけします。
世界平均値はおよそ6割が外部被ばく、4割が内部被ばくです。
よって、以下のとおり。

大人(15歳以上)  外部被ばく 3mSv/Y  内部被ばく 2mSv/Y  計 5mSv/Y
子供(15歳未満)  外部被ばく 0.6~0.9mSv/Y  内部被ばく 0.4~0.6mSv/Y  計 1~1.5mSv/Y

どうでしょう?
ひとつの参考値としては、勝手ながらまあまあではないかなと思います。
年齢については、いわゆる体重が大人と同じになるといわれる年齢で、大人と子供を分けました。
ただし、10代後半はいまだ成長ホルモンが活発な時期なので、18歳か20歳あたりで線引きした方が良いかも知れません。
あと、子供の線量については幅を持たせました。
小さい子は低い方を、大きい子は高い方をみてください。

あくまでも個人的意見ですので、参考程度で見てください。m(_ _)m
(2011.9.13. 追記、修正)

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